陸前高田 ジャズタイムジョニーにご支援を

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陸前高田 ジャズタイムジョニーにご支援を

陸前高田の人々の魂

筆者が仮設店舗の「ジャズタイムジョニー」を訪ねたのは2014年7月4日だった。照井さんにお話をうかがった後、その場にいあわせた、いまはジャズタイムジョニー再建実行委員会の一人となっている陸前高田市在住の及川慎治さんに、かつての「ジョニー」の跡地にクルマで案内していただいた。

そこは見渡すかぎり、空き地だった。瓦礫はすべて撤去され、遠くにはこのあたり一帯の土地をかさ上げするための土を運ぶ、まるでSF映画に出てくるような巨大なベルトコンベアーが見えた。

及川さんに「ジョニー」があった場所を指でさしていただいたが、そこには雑草が生えているだけで何もなかった。「そこの角をまがってまっすぐ行ってすぐのところに陸前高田駅があったんですよ」と言われて、かつて「ジョニー」のあった場所から南の方角を向いたが、見渡す限り、そこには何もなかった。

陸前高田「ジャズタイムジョニー」ジャズ喫茶案内
かつて「ジョニー」のあったところ。舗道の石畳だけが以前と変わらぬまま残っていた
陸前高田「ジャズタイムジョニー」ジャズ喫茶案内
遠くにかさ上げ工事のための土を運ぶ巨大なベルトコンベアの一群が見えた
陸前高田「ジャズタイムジョニー」ジャズ喫茶案内
かつて「ジョニー」のあったところから撮影。いまは大きな石のある角を左へ曲がると陸前高田駅へとつづく「駅通り」。道の両側に商店が立ち並んでいた。まっすぐ進むと右側に「みせこ」や「マルマン酒店」、左側には「旅館やまと」などがあった

陸前高田の夏の風物詩として東北地方で有名な祭りが、気仙町の「けんか七夕」と高田町の「うごく七夕」だ。

前者には900年、後者には700年という古い伝統がある。「うごく七夕」は、色とりどりに染め上げられた和紙による七夕飾りを付けた各町内会の12の山車が、賑やかな笛のお囃子や太鼓の音、威勢のいいかけ声とともに陸前高田の中心街を練り歩くというもの。

この祭りには死者の魂を鎮める意味があり、この地方の新盆にあたる8月7日に毎年行なわれるが、震災のときの津波で12の山車のうち9つが流されたものの、それでも残りの3つでこの年も続行された。陸前高田の人々の魂そのもののような祭りなのだ。

「うごく七夕」への参加は誰でも自由で、山車とともに幼い子供から大人、お年寄りまでが一緒になって市内を歩く。

かつて「ジョニー」のあった「大町通り」から駅までつづく「駅通り」は、この「うごく七夕」の山車が次々と通りすぎてゆく、この祭りのメイン会場のような場所だった。

震災後もずっとこの旧市街で「うごく七夕」は行なわれていたが、かさ上げ工事が進んだために山車が通っていた道が埋められてしまい、2016年でそれも最後となった。

いまグーグルのストリートビューで見てみると、「ジョニー」跡から見渡せた旧市街の跡地は、高く積み上げられた土の壁にさえぎられてまったく見えなくなっている。かつての陸前高田の繁華街は完全に消滅してしまったのだ。

陸前高田の街の夏を風情豊かに彩っていた「うごく七夕」の様子は、YouTubeに何本か映像が上げられているので、いまでもそれを見ることができる。ここでは1998年8月7日に撮影されたものを紹介しておく。

約2時間15分と長いもので映像はかなり粗いが、まだ日が沈みきらず、小雨が降るなかではじまった祭りが、宵闇からすっかり暗くなった真夏の夜へとすすむにつれ、山車が光彩を放ちはじめ、笛や太鼓の音が熱をおびて最高潮に達していくまでの様子が見事に収められている。

この映像が撮影がされた地点は「駅通り」と「大町通り」が交差するところ、「ジョニー」より数十メートルほど西のあたりのようだ。この長い記録のなかで、ほんのわずかな時間だけ、かつての「ジョニー」があらわれる。

映像が始まって59分30秒あたりから約30秒間だ。店の前を山車がゆっくりと通り過ぎていく瞬間が映し出されている。まだ照井夫妻が経営していたころの「ジョニー」が、とても粗い画像だがなんとかみえる。(了)

photo & text by 楠瀬克昌

 

参考資料:森哲志『あの人にあの歌を 三陸大津波物語』朝日新聞出版/  シュート・アロー『昭和・東京・ジャズ喫茶』DU BOOKS

 

陸前高田「ジャズタイムジョニー」ジャズ喫茶案内
「ジャズタイムジョニー」店主照井由紀子さん

Jazz Time Johnny  ジャズタイム ジョニー 

  • 岩手県陸前高田市竹駒町字仲の沢9
  • TEL: 0192-54-3934  HP:なし/SNS:なし
  • 営業時間:12:00-19:30  火曜休

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