BOOKS  北海道ジャズ物語

BOOKS  北海道ジャズ物語

北海道が創り上げてきたジャズ文化を1冊に

北海道物語-ジャズ喫茶案内©jazzcity

北海道のジャズ喫茶巡りをしようと考えている人には、たいへん役に立つのがこの1冊。私も北海道のジャズ喫茶、ジャズバーの取材記事をこのサイトで書くにあたっては、ずいぶん参考にさせていただいた。

著者の畔田俊彦(くろだとしひこ)さんは、釧路出身で現在は札幌在住。大学進学で上京して大手電機メーカーに就職、コンピュータ関連会社での経営管理業務を経て1992年に北海道に戻り、アパート・マンション経営に携わりながら起業コンサルティングや商品開発の仕事を手がけているという。

畔田さんは東京に住んでいた70年代半ばから90年代始めまでは、新宿、吉祥寺、横浜などのジャズ喫茶、ライブハウスの常連だった。そして北海道に帰り、地元のジャズクラブやジャズ喫茶に足を運んでいるうちに北海道のジャズシーンならではの魅力にひかれるようになり、その現状や歴史をまとめ、関係者たちの証言を記録として残すためにこの本の編集、発行を思いたったようだ。

本書には、冒頭の北海道全域のジャズ喫茶、ライブハウスをレポートした畔田さんの「北海道ジャズ紀行」から、現役ジャズ喫茶店主や北海道在住のプロ、アマミュージシャン、ジャズフェス関係者らによるエッセイ、そしてジャズ喫茶ファンによる、いまはなき数々のジャズ喫茶への回顧文まで、あわせて46本の原稿が収録されている。そして巻末には、著者がまとめた「道内ジャズ喫茶・ジャズバー一覧」が「付録」としてつけられている。

つまりこの1冊のなかに、戦後60年間の、なかでも1970年代から現在にいたる北海道のジャズ情報が詰めこまれているといっていい。もちろん、本書の中からこぼれてしまった事実やエピソードはたくさんあるのだろうけど、それを自分の足で探し訪ねて埋め合わせていくこともジャズ喫茶巡りの楽しみのひとつだろう。

すでに閉店となったジャズ喫茶のエピソードには興味深いものがたくさんあるが、なかでもベテラン・ジャズリスナーの桝田民男氏による「我が懐かしき札幌ジャズ喫茶」には、移転前の「ジャマイカ」や、もはや幻の名店となった「act:(アクト)」の店内写真など、たいへん貴重な写真が掲載されている。

また、表紙には惜しくも最近閉店となった釧路の人気店「THIS IS」の様子を描いた絵が選ばれ、巻頭にはジャズ喫茶34店(うち約9割が閉店)のマッチの写真が紹介されているのもジャズ喫茶ファンにはうれしいところだ。

巻末資料として添えられた「道内ジャズ喫茶・ジャズバー一覧」は、北海道全域の127軒の住所、電話番号、1行メモを掲載した労作。ただし、「ジャズが聴ける店」というたいへんおおまかな基準で選んだリストのようで、ラーメン店が2軒含まれるなど、この中からレコードやCDをそれなりのオーディオで聴かせてくれる店を探しあてるのは、実地調査をする以外に方法はない。

また、発行が2006年なので、この間に閉店となった店もかなり多いだろう。本書掲載のプロフィールによると著者の畔田さんは北海道のジャズ情報を発信するウェブサイト「北海道JAZZインターネット倶楽部」や「ジャズ酒場」を主宰しているとのことだが、現在はどちらのサイトも更新されていないようだ。

実はこの畔田さんとは、網走のジャズ喫茶「デリカップ」で一昨年(2014年)、一度お会いすることができたのだが、こちらの取材時間や列車の都合により、最近のご活動についてじゅうぶんにお話をうかがうことができなかったことが悔やまれる。私より3つ歳上でまだまだバリバリにお元気そうだったので、ジャズ情報サイトの復活など、今後ますますのご活躍を期待しております。(了)


『北海道ジャズ物語 北の熱きスウィング魂』畔田俊彦/柘植書房新社/2006年/定価2000円+税

 

「ジャズ喫茶案内」運営管理人。1959年生まれ。高知県出身。ジャズ喫茶初体験は18歳。ジャズライブ初体験は1978 年、 ジャズ喫茶「アルテック」(高知)でのビル・エヴァンス・トリオ。東京での出版社勤務を経て2013年、名古屋移住。jazzcity代表。

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